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視点、観点、する側、される側|映画【金子文子と朴烈(パクヨル)】

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銀座店にいた時代に起きてしまったことだが、レストランにおける洗い場(Dish Washer)は微妙なポジションだ 巧くやらなければお店が回らなくなるが時間帯によって皿やカトラリーが使用されなければコアタイムは訪れない そこに人件費をかけることも無視することも数字に大きく影響してくる 業務としては簡単なようで難しい 優先順位をつけ効率的に運用しなければキッチン、もしくはゲスト席のセッティングがおぼつかなくもなりえる

 

南アジアから日本に働きに来ている人は多く、飲食業界にも沢山居た わたしの属したイタリアンにはその働き口を斡旋するようなことを請け負っている若者が一人いて人手が足らない時は非常に助かったこともある 本人も父が阿佐ヶ谷あたりに飲食店を開き経営しているらしく自身は修行も含めてか外に働きに出ている様な感じだった

 

斡旋された内の一人、18歳にも見えない様な若者がわたしのいた店舗に働きに来た とにかく稼ぎたいという雰囲気が日本語を話せないから余計に強く受け止められた 彼はとにかく働いた ある時、わたしが急遽新宿店にヘルプに出ていた際、ランチタイムは始まっていて電話に出ている場合でもない最中、電話の相手は警察だった 銀座店で雇用していた洗い場の南アジアから来た若者が不法滞在で捕まったということで話を伺いたいという内容だった 正直、意味不明だった 当然初めての経験であり理解するのに時間も必要だった その後、東京出入国在留管理局からわたし宛に電話が入り半ば強制的に事情聴取のような形で法律の説明等を含めあらゆる質問を投げかけられた 結果、驚くべき事実は彼が不正IDを使用し正体不明で入国し勤務していたことだ その時は脳が追い付かずに一言も何かを発せられない感覚を初めて経験した 毎日、彼を呼んでいた名前は偽名だったということだし、自分ではない誰かを装っていた現実… 後味の悪い昔の話 彼にとってみれば生きる為の術 わたしからすれば静かに洗い場で働いていれば捕まることもなかったように想像したがソコはやはり生活の違いか、彼はダブルワークをすることで収入を増加させようと必死でそれが仇と成り情報が廻ってしまったんだと伺える 当時、南アジアからだけではなく、中国、韓国からも学生ビザを取得して日本に来ている子達もアルバイトで雇用していたが週に制限される労働時間は厳しく決まっていた 実際、彼が捕まった場所はわたしの居た銀座ではなく、わたしに内緒で勤めていた全く別の会社、西麻布の飲食店で御用と成ったらしい

 

映画【金子文子と朴烈】特に何かあったわけではなく、サムネと日本人の名前がタイトルに表示されていたのでクリックしたようなものだ いつもそうだが簡単な映画の要約さえも毎度目を通さないことが多い しかし、この作品は素通りしても良かったのかもしれない 正直感想を持てない箇所も多く意識しなければ日々の中で触れないような過ごし方をしているつもりはないが得ようと思わなけば目に映すことのない内容ではないか 主とするものがずれてしまうかもしれないが過去作、映画【硫黄島からの手紙】と視点をアメリカ側にした【パールハーバー】だったか2部作のような公開映画で前者は日本側の視点、後者はアメリカ側からの視点で作られた作品があった 方向性を同じように観てしまうのは「金子文子」という人物が朝鮮側の視点で生きたからだと思っている

 

エンドロールを観ていてほぼ完全にすべてが英語でもなく、日本語でもない表示がされていたので当たり前にこれは製作は韓国なのかなと受け止めることが出来た こういったヒューマンドラマのような作品は大概に主人公に起きたその後の説明が字幕で入るがこの作品の主人公の一人『朴烈』が1945年に釈放されているのが驚いた そういう何か経緯があったのだろうが映画を観てストーリーを把握した側としては大どんでん返しのような終わり方だ

 

こういった作品はインターネットが普及し、特に意識せずとも海外の作品を軽率に閲覧できることの良し悪しもあり、バイオレンスムービーとしても受け取れる

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