決定的だったのは今年も有給休暇が1日も取得できなかったこと。
これに加えて、15日連続勤務が発生したこと。
この2つの理由が原因となり退職を決めたらしい。
激しく同意はできる。
彼女は調理人の中でも若く、実力もあった。
例えば1日の配置人数、マンニングが5人であったとする。
5人が勤務するということは仕事量は7.5から8ぐらいは見越しているのが食の現場でもある。仕込みから、片付け、調理、調理補助。そして、その現場は老健であるがゆえに栄養士が管理するメニュー、細かなメニュー指示、個々によっての代替えも常に発生する。実力も柔軟さも非常に求められる。誤って間違った食事を提供してしまえばクレームどころか体調悪くしたり、容態急変の可能性すら存在する。
お粥提供を白米で配膳するだけで当たり前に事故へとつながる。
調理人の彼女は若くしてコミュニケーション能力も高く、栄養士としての技術も高く視野が広かった。結果を残せる人材。しかし、それが仇と成り雇用側は頼り、頼らざるをえなく日々頼り切ってしまった。結果、彼女は現場を去ることとなった。
去年は有給休暇を1日も取得できずに年を越したらしい。
後付けであり雇用側の申し訳なさからか有給休暇を買い取る形で双方の決着はついたようだ。百歩、千歩譲ったうえでの納得だと私は思う。有給休暇を取得できなかったから買い取る。結果論でしかない。その前に改善が出来ない事態に重点を置くべきだと考える。結局のところ今年も有給休暇を取得できない状態が継続され、連勤が続いてしまい彼女本人の糸が途切れ退職となった。本望ではないと思われる。
彼女と退職日が決まってからは少し濃い話をした。やはり人がイイ人は損をしてしまうのが食の世界のようにも感じる。自分も食の世界を知っているからこそ理解できる闇。
退職日を待たずして優秀な彼女の転職先は決まっており、内定が出ていたそうだ。
納得。
仕事を効率的にできるのだから、自分自身のマネージメントに苦労することはないだろう。次の職場では出勤数も、有給休暇もやりがいも彼女の納得のいくものであってほしいと願う。
これが起きてしまった老健は利用者、通所、入所関わらず1つのキッチンで提供する食事を賄っている。テーマとしては地産地消。未だ100%とまではいかないがそれを栄養士が管理し、調理人が作り、提供する。配膳数としては通所の昼食だけで約50食。入所も約50名の3食(朝、昼、晩)。単純計算で1日200食の仕事量。当然だがレストラン、定食屋とはわけが違う。食べる側に嚥下の問題もある場合も少なくはない。刻み食アリ。お粥アリ。肉が駄目なら魚対応。提供する時間が確実に決まっていることだけが救いなのか、仇なのかは不明だ。
管理栄養士2名は老健の直雇用だが、調理人側のスタッフ達は委託だ。その為に彼女を含めた直に手を下すのは委託メンバー。
併行して老健スタッフ(医師、相談員、看護師、PT、OT、ST、介護士)の食堂、昼食も担っている。味は良しだ。評判がいい。そこまでのクォリティが社割で昼食として取れるのは福利厚生として十分だと思う。利用者側から美味しいと声を多く聞いたことはないが完食率が高いことから満足しているのだろう。勿論なかには好き嫌い等で残す利用者、その日の体調で量が進まない利用者もいる。
貢献度が高い功労者を追い詰める環境を改善することが出来なかった管理側に疑問は呈する。もう既に足元を見られなくなっている状況か。去る者は追わずとしているのか。替わりはいくらでもいると甘んじているのか。定かではないが彼女は1人で2.5人分ぐらいの結果は生んでいた様に思う。
当たり前と表現したくはないがいつも、どこでも出来ない人の量をまかなうのは出来る人…仕方なしの繰り返しなのだろうか。
何年経っても同じことを繰り返している。
残念だ。