前に進むための場所

過去の掘り起こしを未来に繋げる

ビル・エヴァンスとワルツ・フォー・デビー

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ビル・エヴァンス ワルツ・フォー・デビー…レコードのジャケット 何気ない印象で強く残ったそれは今、タイトルを耳にするだけで初めて手に取った時の光景が思い出せる 池袋にもbarは多種多様だ 沢山ある 何度も繰り返し老舗として雑誌に掲載されるお店もあれば、バックバーに、酒棚に顔を見せる品揃えがリアクションを取れないようなラインナップになっており、そこで提供される一杯の価格にもどう声をあげていいのか不明になるような名店も存在する 変わらずに横の繋がりは深く長い その中のひとつ わたしが少しだけお邪魔していたお店はバーボンの品ぞろえの多さで名を馳せていたお店だった 勿論そのお店も一定の期間が過ぎればカウンターに立つバーテンダーが変わっていく 修行、独立の前に勉強と称して雇ってもらっているバーテンダーは移り替わる わたしがそのお店のカウンターにお邪魔していた時期にメインを務めていた方は自分を「インテリ」と表現する人で、未だ田舎かから上京してきたわたしには初めてお目にかかるタイプの人柄だった あまり反りが合わずにひと時の間さえ、お互いが出してしまう吐息さえ戸惑い、秒単位で苦痛を味わった苦い思い出もある

 

そのバーボンズバーはオーナーのジャズ好きとバーボン好きとオーナーのキャラクターで呑み手から愛され守られてきたことは容易に感じ取れた ビルの2階にあるそのbarは扉を開け中へ進むと真っすぐと通路になっており、右手にカウンター左手にはテーブル席3名掛けが2山続き、角は4名掛けとなっている造り その右手はバーカウンターの右奥側へ続くようにエル字型の角として繋いである

 

バックバーから客席側の棚まで並ぶお酒は9割方バーボンウィスキーだ アメリカ生まれのその酒の小さいくくりにはテネシーウィスキー(ジャックダニエル)も含むため当然にそれらも気持ち微かに準備されている そのおまけ程度には種類がごく微量なコーンウィスキー(プラットバレーが有名かな…)もチラリ

 

BGMは”JAZZ”アナログ盤、それは揺るがない 古い年季の入った封のレコードを一枚づつ丁寧にジャケットから取り出し、プレイヤーに静かに大切に乗せて、レコード盤から針をつたわせてスピーカーからジャズを流す 何枚あるのか数えたことはないがコレもオーナーの財産のひとつだろう 名盤がレコードで棚にずらりと並ぶ 土地柄とは関係なくお店のコンセプト的に客層は若くあるはずもなく(若者は恐れ多く近寄れない雰囲気は間違いなくあった…立教大の教授がゼミの生徒を連れてきているのを週末はよく目にした…)オーナーのファンでありジャズを愛し、バーボンをグラスに注ぎ入れ傾けたい大人たち、いわゆる池袋西口の紳士淑女が訪れるお店だった 照明はイメージ通りの暗めかな

 

CDジャケットではできない演出は、BGMをかけているプレイヤーに立てかけて現在流れている曲、このジャケットですよ的な演出 これが映えるのはやはりアナログ盤のレコードが入っていた大き目のジャケットだろう あまり見聞がないわたしでも当時からその思いはあった そのお店で初めて知ることになったジャズ達はきりがないが今回エッセイを読んでいて違った思いではあるが、そのアーティストと曲名は一致していた

そのエッセイを読み進めるだけで当時をとても懐かしむことが出来た

 

…小学校から中学校に進学するタイミングで、突如食卓に現れた一枚のCD。ジャズピアニストのビル・エヴァンスによる名盤『ワルツ・フォー・デビー』だった。…

音のとびらを開けて

マイ・フーリッシュ・ハート

江崎 文武

引用:文學界 2023年9月号