前に進むための場所

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バランスを取る点は平ではなく、腹である

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今週のお題「こぼしたもの」

 

ワインバー?、レストラン?とも表記されていたお店 東京での飲食業はそこで初めて経験した 未だ飲酒運転に対しての対応が寛大であった時代 西麻布付近、外苑西通り沿いの飲食店の前には会社帰りや打ち合わせの途中で店の前に横づけ、路駐している高級車が立ち並んでいた 乃木坂駅から西麻布交差点角にあるブッシュさんと小泉さんが会食で使用したお店【権八】へ続く道は途中、三差路になっている この辺りは交差点から少し離れカーブになっているためか、お上りさんが少なく見通しが悪く反対側の道路へ渡る横断歩道も存在していなかったので日常で当たり前に利用するような人たちしかあまり出入りしないような雰囲気の空間だった わたしには東京の中の東京を深く感じた土地

 

予期せぬ事態、自分の想像を超える瞬間は突然にやってくるものだが経験者は皆それを先に「…かもしれない…」と予測する

 

シチュエーションは西麻布のそのお店で早めのディナーの為に来店した複数名のゲストのテーブルで起きた 確か5名だったか…定かではない 食事を取るかとらないかは微妙なところで、とりあえず乾杯するので最初のドリンクオーダーを全員に伺い、カウンターの中にいるバーテンダーへオーダーを通した 手際よく仕上げられたカクテルや生ビールが少し高めのバーカウンターに並べられた それらをひとつづつサーブする為の客席へ運ぶための”お盆”*1またはトレーに適当に乗せ対象のテーブルへ運んでいった この時がわたしにとっては生まれて初めて、映画に出てくるパーティ会場でドリンクを提供するウェイターのようにトレンチに多めのドリンクを乗せ運び、片手にそれを乗せたままで、円卓に狭く身を寄せ合い座っているゲストの間をぬったうえで注文されたドリンクをその方々の右手側へサーブしていかなければならない行為を経験した 端からみていた先輩が後から教えてくれたが、ドリンクを1杯、2杯とテーブルへサーブした2杯目で既にわたしの左手に持つ”トレンチ”は大きく傾いており、いつひっくり返してもおかしくない状況だったそうだ それ、そのままわたしは3杯目のドリンクを3人目のゲストの右手側にサーブしようと体をゲストの隙間へ綺麗に入れたつもりが同時に左手に持つ”トレンチ”が体の傾斜と同じ角度で裏返しになり…4人目のゲストへ向かって残り3杯のドリンクはこぼれた こぼしたものの内容は勿論もう覚えていない カクテルだったのか、生ビールだったのか こぼされた側のゲスト達は寛大で大きく憤慨することもなく対応してくれた ここも遠目から見守ってくれた先輩ウェイターの先見の目?なのか、わたしが溢すだろうとゲストは許すだろうを見極めた上で経験の為に複数のドリンクをトレンチで持たせ、コツは教えずに失敗するだろうをふまえサービスさせたという出来事 ゲストからしたらたまったものではないがわたしはこの出来事、あってはならない映画のワンシーンのような一幕を味わったことによりその後、当然だが1度もこの提供するものを複数ゲストの側に運び、態勢をくずしてゲスト側にこぼしてしまうようなことはなかった そうならないような所作をこの出来事の後から自ら考え実践していくことで改善することが出来た 

 

ポイントは”トレンチ”を持つ左手*2教わらない、教えて貰えない飲食業のお店に勤務すると日々、自分でなんとかしていかなければならない それが功を制すこともある 初期段階では”トレンチ”を乗せる場所は左手の平かと思い込んでいたが回数を重ね意識していくとバランスが取れ柔軟な動きに緩急さえもつけていくには左手の”指”が重要になってくる 親指、人差し指、中指がキーと成りこれを補填するかのように残りの薬指、小指を微調整として意識する これが理解出来ると足が細くバランスの悪いシャンパングラスや中身の入った紅茶のティーカップもおてのものに変わる 安定させる感覚が生まれ注力する視点も替わり意識がグラスやカップではなく中身の液体に移り変わる 要は”トレンチ”で飲み物を運んでいる容器は支点が安定し中身のドリンクの揺れさえも落ち着かせ持ち運べる 逆をかえせばこぼし、ひっくり返すことも容易になる

 

こぼしたものは小だが、えたものは大だ

 

*1:わたしの界隈ではトレンチとも言ったが、Googleの検索結果でトレンチは洋服として羽織るコートとしての意味合いで表示される内容が上位だ

*2:右利きは基本、お盆は左手に持つ