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マークパンサーの髪型になりたかった

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中学生くらいの時期に生まれて初めて”美容室”へ行く…という儀式にかかわった。それまでは床屋へ千円札を握りしめてバリカンで坊主にしてもらいに行っていた。月一。

床屋でも理容室でもない美容室は特別な雰囲気だった。はたからチラ見することは日常で多々あった。本屋の角に美容室の入り口があり、当時では鼻につく薬剤、パーマ液たちの香りが大人の世界に感じた。本屋の裏口から美容室の方を覗くと丁度、美容室に設置してある鏡と反射して美容室の中が少しだけ垣間見えた。ときおり鏡越しに接客されている叔母様と目が合いすぐさまに逃げ出した。いつも美容室は人で賑わっていた。ドライヤーの唸る音とパーマ液の鼻に刺す臭いが特別な場所だと認識させた。

美容室に連れて行ってもらい髪を切って貰う予定が言い渡されてからは急いでメンズノンノを手に取り、当日まで必死でやりたい髪型を探した。選んだ。悩んだ。

スポーツカーに目移りするような衝撃を受けたのは【マークパンサー】だった。そうglobeのボーカル、ラップ等を披露していたエンタメモデルさん。短髪で端正な顔立ちのハーフ?クォーターかなんかの人。子供心に憧れた。その瞬間からはマークパンサー1点買い。美容室に行く日を迎えるまで毎日毎日マークパンサーの髪型がクローズアップされた記事の場所をハサミで切り取り、財布にしまったが繰り返し財布から取り出して眺めた。何度も見返した。角度も変えて見ていたりした。マークパンサーの髪型に成ることを夢見て。

美容室訪問当日。お店に入るとお姉さんらしき美容師が席に案内してくれた。恥ずかしかったがポケットからマークパンサーの髪型が写し出されたメンズノンノの切り抜きを美容師さんに手渡し「こんなふうにしてください」と相手に聞こえるか、聞こえないかぐらいの声の音量で言った。うまく伝わらなかったのか2回発した気がする。

美容師さんはマークパンサーの髪型を確認しながら、少し考え、カットする方針を決めるかのように頭をまさぐった。

結果的に学んだことはマークパンサーの髪型には…のようには成らないということだ。

学びを得たのは、頭の形が違う。髪質が異なる。生え方が違う。髪の色が違う。顔立ちが…骨格が…絶壁が…と色々あった。しかし、相手もプロだった。とにかくつきつめいけるところまでマークパンサーの髪型に近くしてくれた。

満足だった。

生まれて初めての美容室でマークパンサーの髪型には届かなかった。