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レストランでフォカッチャと出会う

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今週のお題「好きなパン」

 

 「好きなパン」と聞かれたらイタリアンレストランで提供されていた【フォカッチャ】私はそれ一択だ。不思議なことに焼き上がりよりも温度が下がったぐらいのときが一番旨味を感じた。

 

「こんなパンは食べた事がなかった」

 

 これが初めて先輩パテシェが作り出す【フォカッチャ】を手に取りありがたみもわからずに口にした時の感想だったはずだ。焼き上がりがオーブンから引っ張り出されるとサイズの大きな生地が膨らみ面積、体積はあたりまえに増えている。作業台に取り出された焼き上がりの生地は淡い黄色というか、茶色を軸に山吹色へグラデーションをかけたような色調をしていた。上部には岩塩が施されており調理場のライトがそれを気づかせるように透明に白に向かってこちら側に訴えかける。この岩塩がまた少しだけ食感が強いフォカッチャの上面を美味しく彩る。ハンバーガーのように表せば上下の生地で挟まれバランスを保つことが出来ている断面は一生懸命上に向かって生地と酵母がバランスよく膨らみ絶妙な柔らかさを作り上げていた。口に運べば、口の中でもそれはふわふわしていた。だけど、酸味が演出された味はクセに成らざるを得なかった。

 

 フォカッチャが敷き詰められた黒い弁当箱のような長方形の器。それは和をティストにしたデザインの様。内側のサイズに合わせてフォカッチャを長方形にカットし、その形状をまた正方形、食べる人、手に取る側が口に運びやすいサイズにパン包丁を入れていく。それらは黒い箱に敷き詰められる。【フォカッチャ】にみえる上を向いた穴からは時折オリーブオイルが見え隠れする。膨らんだ酵母からも緑色はフォカッチャの白を強調するように流れたりもした。

 

 そのレストランではコース料理をメインにサービスされていた。来店し、席に案内され注文を終えるとまずは水が提供される。担当カメリエーレ(給仕)が炭酸の有無を聞きどちらかを選ぶ。水に制限はなく呑み放題のような提供でありウォーターチャージとして500円加算される。

 

 席に着き、食べる主を決め注文が終わり水や他のドリンクで口や喉を潤し落ち着き始めているとアミューズ、前菜等の調理時間の間を埋めるかのように【フォカッチャ】が提供される。コース料理のテーブルセッティングには大抵座った席の左手側に「パン皿」と呼ばれる器が置いてある。右手は前菜で、パスタで自由が効かなくなるために左側にということだろう。左側にあれば主を食べながら左手で【フォカッチャ】を楽しめる。

 

 イタリアンレストランにパスタや肉料理、コースを楽しみに来た人達みながその【フォカッチャ】を提供されれば美味しい事に気づいてしまう。おかわりは自由であることで前菜が到着する前に、自分の皿が届くまえに何度もパンを口に運んでしまい胃袋の半分を【フォカッチャ】で埋めてしまうことは日常茶飯事だった。美味しいが故、仕方がないこと。