教習所の入り口を抜けると今では皆が素通りするようになったカメラ付き体温センサーが置いてある。その少し奥にはホワイトボードが佇む。今月の教習課程。送迎の連絡事項。教習所に通う人に告知されている情報が張り出されている。ホワイトボードを左に抜けると男子トイレがある。トイレからフロアに戻る為にドアを開けトイレから出てくるとホワイトボードの裏側が視界に入る。そこには捜索願が出された女性の張り紙が左隅に貼ってあった。9歳の時に誘拐されたような内容、現在は30歳に成っているだろう想定のデッサンも書かれていた。当時の場所は関西の方面。ホワイトボードの裏側に貼り付けられたそれはあまり人目にはつかない。
蚊帳の外
当事者同士でしか理解できないことは多々存在する。それをはたから見た場合に大多数の人はネガティブな想像として捉えてしまうことがある。一度その方向に認識されたそれらが元に修正され本当は違う事実があったとしても覆すことは困難だ。なにより事実を知る当事者は少数であり、大多数が正義とされてしまう傾向にあるから。口が巧くない人間が相手に理解してもらう為にはどうすればわかってもらえるのか。待つしかないのか。表現が下手な人は物事をどのように伝えたら相槌を打ってもらえるのだろうか。
幼少期、子供の頃に出逢う大人は運もタイミングもある。自分で選べる環境にそれはない。親が関係し、親族が関係し、兄弟姉妹が発生させる何かでもある。未だ子供だと認識される年齢に接する何歳だという判断もつかない大人には強く影響される部分がある。不思議とそれは強く印象に残り、時には道標に成ってしまうことさえある。
両親が真剣に伝えてくる言葉よりも日常生活の中にあり、何気なく発せられた言葉の方が重みがあり聞き流すことが出来ずに、偶然と称して心に残り後の行動に影響してしまう現実もある。
火中の栗
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