今週のお題「手づくり」
BARの大事な脇役、なくてはならない「氷」。
氷の発注
カクテルやウィスキーのロックに使用する氷は町の氷屋さんに発注をかける。
自店舗に設置されているアイスストッカーの上に必要な氷の量を「1貫」とか「2貫」と適当な紙へ記入し置いておく。
(氷屋さんの扱う単位は貫<かん>、1貫は約3.75kg 大きさ12cm*12cm*25~6cm)
発注後、翌日の昼過ぎくらいには必要な貫数の氷をアイスストッカーの中に納品しておいてくれる。
氷の仕込み
BAR営業で使用する氷の用途は様々だ。
仕込む氷のタイプは3つ程。
- カクテルのロングタイプで細長いタンブラーの中に入れる角を取った氷。 (理由:ジントニック、カンパリソーダ等へ角を取った氷を使うことで溶ける時間を遅らせる。)
- ショートカクテルを作るのにシェーカーへ入れる用の大中小と大きさがまばらな氷。(理由:大きさがまばらな方がシェーカーの中で要領よく隙間を埋め氷を積み上げていける。)
- バーボン、シングルモルトなどのウィスキーをロックで注文された時にオールドファッションドグラスのサイズとあわせた【丸氷】。(理由:液体をグラスに注いだ時に綺麗に映える量と見た目を演出できる。)
氷のカット
短い柄の3本刃アイスピックで氷の枠を作り、長い柄の1本刃アイスピックで削り仕上げるBARの「丸氷」。
手順としては
- 1貫の氷(12cm*12cm*25~6cm)を1本刃アイスピックでだいたい3つの正方形にカットする。
- 正方形の氷を10個ぐらい用意して適当なビニール袋へ納める。再度アイスストッカーへひと晩寝かせて氷をしめ直す。(1貫から3個の正方形がカットできる。)
- ひと晩寝かせた正方形の氷を3本刃アイスピックで荒く丸のような形状をめざしカットしていく。(この時氷の削り粕が大量にでるのでコレを別のビニール袋へ納めアイスストッカーへ保管しておく。※フローズンカクテルやクラッシュドアイスを使ったカクテル「ラムとフレッシュミントのモヒートなどにあわせる為だ。」)
- 粗目の形状の氷を1本刃アイスピックで手際よく完全な「丸氷」に仕上げる。
手順の3.と4.に時間が要してしまうと氷が溶けはじめアイスピックの針が氷に刺さらずに針が負け駄目になってしまう。(※回避する為、3.の後にもうひと晩氷を寝かせしめ直しも1つの手だ。)
並行して氷にも悪影響が生じ、思わぬ角度に負荷がかかり氷に亀裂や割れ目が入ってしまう為に時間との勝負だ。
アイスピック自体も針に手入れが行き届いてなければ氷に負け先端が潰れてしまう。
各要素が噛み合い、整ってはじめてゲストへ提供できるBARの「丸氷」が完成する。
終わりに
氷の仕込みに関しては、手の温度、体温に個人差があり着手しはじめは困難を極める。
最初から引き締まった氷を手に取り持ち続ける事が可能なタイプもいれば、直ぐに根をあげ氷を持っていられない体温が高いタイプもいる。
どちらにしても思うように「丸氷」を「手づくり」で仕上げる為には短い時間で精度よくアイスピックをコントロール出来なければ完成には至らない。
日々の道具の手入れが結果に繋がる。
そうやって仕込まれた「丸氷」には徐々に愛着が湧くが出番がくればあっという間になくなっていく。BARが週末を迎えれば大抵20個くらいは簡単にゲストのウィスキーと共に提供されていく。
そしてまた1貫の氷から1個の「手づくり/丸氷」を仕込んでいく繰り返しだ。