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故人を偲ぶ【淑女が最後に選んだカクテル ピンク・レディ】卵白はメレンゲのように

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17:00ぐらいに開店するbarに直ぐドアを叩くタイプは大抵2通りだ

  1. 同業者
  2. 誤って入店してきた

今回は違った 当然のようにカウンターへ向かい腰を据える

可能性はもう1つ

この店が居抜き店舗の為に前のbarの常連様という場合もある

これも違った

 

その淑女はとても明るく気さくな人柄がすぐ手に取るようにわかった

言葉も軽快だ

ファーストオーダーは【ピンク・レディ】

耳を疑った

卵を使用したカクテルを自らオーダーするゲストはまずいない

馴染みがない人たちにとって味の想像がつかないからだろう

1年を通して注文される確率がとても低いカクテル 勿論レシピは知っているし可能だが淑女のバックグラウンドに何があるのか一気に緊張させられた

 

カクテル【ピンク・レディ】

タイプ:ショート カクテルグラスで提供

ベース:ジン

モンジュース(※酸味を足さないレシピもある)

グレナデンシロップ

卵白

 

予想は的中、過去にご主人と新橋あたりでbarを営んでいたそうだ

より自分を緊張させてしまう情報を得てしまう

 

「美味しい」

「今まで飲んだピンク・レディの中で1番美味しい」

目が点になった 虚を突かれた

あっという間にグラスを空け、繰り返し【ピンク・レディ】を頼まれる

光栄にもオーダーは繰り返された

 

ショートカクテルは複数の材料を一体化させることが醍醐味だと私は考える

ベース、酸味、甘味これらが混ざることで一体感を提供する

空気を含ませることでより口当たりまろやかに仕上がる

カクテルによっては逆に空気を含ませずにベースの味を前面に強調させ提供する時もある

今回のカクテルはそこに卵白も加わる

より技術が問われる

卵白特有のとろみも加わるし、総合的な液体の量もだいぶ増える

ショートカクテルはだいたい計60ml

ベース30ml 酸味15ml 甘味15mlで構成されていることが多い

(あくまで目安、作り手によりバランスは違う)

ホテルbarだとグラスが大きくなり計120mlになるところもある

 

話題は変わり淑女が自ら来店した経緯を語ってくれた

娘がこのbarの常連だと言う

しかし、「娘には内緒で来た」あまりに娘が楽しそうに話すから来たと

とても有難かった 

 

その後、淑女は定期的に来店されるようになった

開店した直ぐの時間にサッと来て【ピンク・レディ】を2杯

娘がbarに来る前に綺麗に店を後にする

 

 

時が経ち

ある時、娘から淑女が入院したことを聞かされる

年齢もある程度重ねており理解は出来る

「回復してまた来れるといいね」なんて話してた

 

しかし事はそんなに単純ではなかったようで淑女の退院はままならなかった

その後、娘からお礼を伝えられた

逆に私は深く頭を下げた 貴重な経験をさせて頂けたし私の

【ピンク・レディ】

をいつも2杯楽しんでくれた

 

多分、私はこの先も【ピンク・レディ】をその淑女以外に提供することはないだろう