前に進むための場所

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帰られても、また戻って来ますヨ

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 いつもと同じ場所で。いつもどおりの営業中。変わらない思考でシェーカーを振りカクテルを提供していた。その日は平日なのにいつもより忙しかった気がする。

営業時間の真ん中くらい、日付をまたぐあたりから咳が出はじめた。時間と共に咳がでる頻度もあがる。強がる自分もいるが正直しんどかった。

「今日はまっすぐ帰って早く寝よう」若さゆえそんな事しか意識出来なかった。

 営業後半はお客さんの入りも尻つぼみになり、気持ち早めに閉店とした。

 時間と共に体調は変化した。咳がでなければ何もないようにも感じた。

「明日、起きたら仕事前に病院に行こう」だいぶ浅はかである。

 

 帰宅して、適当に食事を取り布団にもぐる。いつもと体調の雰囲気が違うからか寝付けない。時間と共に咳が出るし、咳が出た後に呼吸が苦しくなってきた。ここから不安が強まる。「今からでも病院行って薬貰って改善しないと...」

 深夜、明け方にもかかわらず病院に行くには救急対応している場所を選ぶしかない。極端な話し、状態はひどく救急車を呼ぼうとさえ考えた。しかし「救急車を呼んで、自分が乗って行くなんて恥ずかしい...」と意味の分からない自問自答をする。

 結果、とった行動は大通りまで歩きタクシーを捕まえて病院へ向かう。その時住んでいた場所は運よく都心部、タクシーも24時間国道沿いに待機している場所があるような土地だった。

 救急搬送されているわけではない人間が深夜から明け方の時間帯に急に病院に訪れても相手にはされない。受付に人はいなかったし。結局、診療がはじまったのは多分受付に自分の存在を伝えることが出来てから90分後だったような記憶だ。「動かなければ苦しくない、咳もでない、早く診て薬だしてくれないかなぁ」頭の中ではそんなことを思う。

 診療開始、症状の経緯と状態を伝えたらCT検査をされた。良くも悪くも人生初体験。

診察結果は「入院してください」勿論状況が呑み込めないので「いや、すいません今日もこれから仕事へ行きお店を開店させなければいけないので帰ります」と私。

担当医は「帰られても、また戻って来ますヨ」と冷静に伝えてくる。私は受け止められなかったのか、理解したくなかったのか必死に帰ろうとした。要は現状酸素を取り込む管が破けていて息を吸っても途中で半分くらい抜けてしまい酸素を取り込めない状態だから苦しいし呼吸困難みたいな症状。静止していない限り危険らしい。

検査結果をもとに説明を受けた内容は

  • 縦隔気腫(何らかの原因で...肺胞壁が破れることで発症)
  • カビが肺に入ったことで発症に繋がった可能性(ここが一番未だに腑に落ちない)

何故か数分悩んだが、入院を承諾した。この後の対応は一番ショックを受けた。車いすが用意され、私は医師の前から車いすに乗り入院するベッドまで車いすで移動した。自分が車いすに乗ることなんてあり得ないと思っていたし、車いすに乗った時の視界の高さがより気持ちに追い打ちをかけた。正直、軽傷なのかもしれないが置かれた環境と受けたショックで少しの間なにも考えられなかった。

 幸い2週間の入院(薬の投与とベッドで寝てるだけ)で破れてしまったであろう肺胞壁は回復したらしい。その後も再発などはしていない。